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――『グエロ』の時も、いろいろなヴァージョン、リリース、リミックス、ネット上のリークなど、「アルバム」の新しい形を提示しようとしていましたよね。今回は、4種類の、買ってみないとどれが入ってるかわからないステッカーで自由にジャケットを作れる、なんてアート面でも自由な表現を打ち出しています。今、音楽パッケージ・ビジネスが良くないと言われている中、パッケージの楽しさ、みたいなものはスゴく意識しましたか?
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| ベック: |
今回ステッカーを付けたのには、理由があるんだ。まず、CDというものの存在がどれだけ長続きするかわからない、ということ。あと3年かも知れないし、あと10年かも知れない。だけど、追求すればまだまだ可能性があるフォーマットであることにも気がついたんだ。ステッカーを付けるアイデアが気に入っているのは、同じアルバム・ジャケットを持っている人がいないこと。リスナーが受け身の立場ではなく、誰もがアルバムに参加できるということ。僕自身、生まれてからずっと音楽のオーディエンスでもある。だからこそ自分でも音楽を作るし、演奏もする。音楽に接すると、何かを受け取るでしょ。パワーを受け取って、何らかの形で参加したくなる。だから、みんな音楽に夢中になるんだ。それと、友達や身内を集めて、アルバム全曲のビデオを自費で作ったんだよ。
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――今回はさらに、リスナーともより繋がりを持とうとしていますよね。インタラクティヴ性を考えていますし。今回のアルバムでも、ソングライティングだけでなく、どんなサウンド・プロダクションで聴かせるかという点もスゴく考えていますよね?
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| ベック: |
それは自分の中でかなり大きな部分を占めるね。どんなサウンドにして音楽にどのようなフィーリングを持たせるのか。これが曲そのものを決めるわけだから。今ここで自分が好きな曲をアコースティック・ギターで弾いて聴かせることはできるよ。でも、楽曲としてはいいかも知れないけれど、サウンドとしては面白くない。だけど、曲のフィーリングをちゃんとレコーディングで表現できたら、もう別世界に連れていくことだってできるんだよ。アルバムの何曲かは、元々はもっとポップで一緒に口ずさめるような曲だったんだ。だけど、そういうのをすべて外したんだ。展開が予想できるような、ベタな曲を外して、コーラスやリリックで別世界に連れていかれるようなものに変えていったんだ。ヒップホップを聴いているかと思ってたら、コーラス・パートになると、いきなりほとんど抽象的な世界になっているようなアイデアさ。シンプルで楽しい音楽に深みと複雑さを加えていったのさ。そしてそこにはもちろん知性だってある。
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――細かなサウンドのピースに加えて、心地良いグルーヴっていうのもこのアルバムのポイントじゃないですか?
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| ベック: |
そうだね。心地良いからしばらくそこにとどまるけれど、そのうち別世界に連れていかれる「旅」のようなものだね。このアルバムは、聴けば受け入れやすいようには作ってあるんだけど、聴けば聴くほど長い旅に付き合わされることになるんだよ。一発で聴き手にアピールするわけじゃない。だけど聴けば聴くほど良さがわかってくる。長い間付き合える音楽なんだよ。
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| インタビュー・文/大野俊也 |