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――本作が完成するまでには、かなり試行錯誤があったようですね。
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| 五十嵐: |
最初、次のアルバムは、これまでの自分たちに無いもの――自分たちの適当さみたいな部分を出していきたいなって思ってたんです。シロップって、ちょっとナイーヴでシリアス過ぎるバンドだと思われてるようなので……。でも、実際の自分はそんなことは全然無くて……だから、そういう自分の適当さを出していくことによって、スッとするんじゃないかなって……。
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――しかし、結果として出来上がったものは、そういう適当さの真逆とも言える、切実な言葉に溢れた作品になったわけですが……。
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| 五十嵐: |
そこは変な責任感っていうかね……自分はすごく適当な人間なんですけど、音楽を通してだけはある種正直に……やっぱり、僕にとって音楽は他者とコミュニケーションをとる唯一のツールなんですよね。だから、それを通して僕と関係してくれた人には、変なこと出来ないなって……そこをなんとか、いつ裏切ろうって考えながらも、結局ギリギリ自分の中で違和感の無いことを言えたのが“リアル”という曲だったんです。
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――「リアル」は、かなり言い切りましたもんね(笑)。
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| 五十嵐: |
〈本当のリアルはここにある〉なんてね(笑)。なんか、みなさんが“リアルとは何か?”って言うのを模索している中、そこまで言い切れる自信は正直無かったんですけど、なんかこう、自分の中でギリギリこれは真実に近いんじゃないかなっていう実感はあったんですよね……。
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――でも、そこで言い切れたからこそ、今回、「希望」や「Your eyes closed」といったネガティヴだけには終わらない曲が書けたんじゃないですか?
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| 五十嵐: |
そうですね。これまでは、どこか拒絶感や疎外してる感じがあったと思うんですけど、今回はそういう“シロップはネガティヴであらねばならない”ってところから、すごく離れたいっていうのはあったかもしれないです。それだけじゃない自分のすべてを込めたいっていうか……。なんか、ひとつの処世術として、そういうネガティヴな部分を突き詰めて、それを喜んでくれる人と馴れ合いながら音楽を続けていくっていうのは違うんじゃないかと……。
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――なるほど。
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| 五十嵐: |
でも、これまで自分の感情を切り取るって作業をやって来て、いちばん不得手としてきたのが、そういう前向きさとか希望だったんですよね……。そういうものに手を染めた時点で、自分の作品が薄くなるんじゃないかって。でも、自分の中のギリギリのところで「リアル」や「希望」という曲を書いて、そんなに罪悪感が無い自分がいるので……。だから、今回のアルバムは、完成度とは違う意味でのマスターピースにはなったと思うんです。今の流れっていうか、今の自分っていうものに辿り着くまでの作品にね。
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――『Mouth to Mouse』というタイトルには、どんな意味が込められているのでしょう?
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| 五十嵐: |
なんか、人工呼吸じゃないけど、とりあえず誰かの手を借りないと瀕死の状態の自分がいて……そこで何か変わらないといけないって思っている自分があり……でも、結局そうやっていろんな人に助けてもらっても、薄くなったり、無くなったりするものは無いんだってこと気づいたんですよね。それこそ、「I・N・M」という曲みたいに、I NEED TO BE MYSELF、“俺が俺である必要がある”っていうか。別に何も変わらないんですよね。あと、マウスって口っていう意味の他に銃口っていう意味もあるらしく……なんか銃口を自分に向けてるような、そういうことをしてるんだっていう気もしたんです。やっぱり、今回は気持ち的にもいろいろ複雑なものが入ってるんで、それが口うつしで伝わったらいいなっていうのと、人に銃口向けるような切実さ――その両方があるんです。
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| インタビュー・文/麦倉 正樹 |