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――息子さん(クレイ)が生まれたそうで、おめでとうございます! それによって、生活や人生観が変わりましたか?
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| フラン・ヒーリィ(以下フラン): |
もちろん一児の親になったことで、生活や人生観は変わったよ。まず今の自分やバンドのあり方への満足度が増したね。「子どもが生まれたら、急に子どもやいろんなことに責任を強く感じるようになるぞ」って友達に言われていた。もちろん息子には強い責任を感じてる。でも実際に息子が生まれた時に、「僕はずっと前から子どもへの強い責任感を持っていて、既にそのことには慣れっこになっている」ということに気が付いた。僕にとってバンドは自分の子ども、それも赤ちゃんみたいなもので、それを守り育てながら、常に正しい方向に導いてきたからね。僕の場合はかえって、以前よりもリラックスできるようになったから変だよね。
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――今年'07年はトラヴィスの正式なデビューから丸10年、すなわち10周年記念の年です。この10年を振り返ってみて、トラヴィスのフロントマンとしてどのような手応えを感じていますか。
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| フラン: |
いやあ、二日前に全く同じことをバンドの仲間と話したばかりだから、全く同じ質問を受けて何か妙な気分だなあ。でもね、バンドの仲間との関係はほとんど変わっていないと思う。今でもみんなで集まると、初めて会った17歳〜18歳の時と同じ気分で話ができる。相変わらず下品で悪趣味な冗談を言っては相手を笑わせることばかりを考えているよ。だけど音楽面では、プロのバンドに変わったと思う。だからリセットの意味も兼ねて、ここ1、2年はしばらく休養をとることにしていたんだ。何100回もライヴを繰返していると、どうしても演奏がタイトになってしまうからね。でも、ライヴからしばらく遠ざかっていたことが、このアルバム制作の場合にはプラスになったね。と同時に、ProtoやMy Space、YouTubeみたいな最新の技術を使ったサイトが人気の時代にあえて逆らって、僕たちは今度のアルバムのほとんどを磁気テープを使って録音することに決めたんだ。アナログ録音の場合だと、1つのリールに収められる演奏は3回に限られてしまうけど、逆に「録り直しが効く」と思いながらのレコーディングにはない緊張感がある。それにアナログのほうが、デジタルよりとにかく音がずっといいんだ!
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――具体的に今回の新作の制作に入ったのはいつ頃のことだったのでしょうか。
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| フラン: |
'04年の半ばに、全員で曲作りを始めたんだけど、ベスト盤を作ることになったので曲作りは途中で頓挫してね。で、その後出来たのが「3 タイムズ・アンド・ユー・ルーズ」だった。この曲は、これまでのやり方とは全く違うやり方で作ったんだ。実はこれ、7〜8分間の長い曲だったんだよ。“音楽的にはとてもいい!”とみんな同意したけれど、歌の部分は余り良くなかった。そこで歌の部分だけを取り出し元のメロディーを残し、それを短く編集し直して4分にまとめて、新たな歌を付けたって具合だったんだ。しかもこの曲、メイン・メロディと歌詞は僕が書いたけれど、その他の曲の部分はアンディが作ったんだ。初めての試みとしたら合格点だったよ。で、“二人のコラボでアルバムを作ろう!”みないに盛り上がった。これがニュー・アルバムを作るきっかけなんだ。でも、結果、本当に満足のできるアルバムになったよ。何しろ2〜3年もアルバム制作に費やせたんだしね。ヴィジョンなんて全然考えていなかったけど。
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――あなたの曲は、いつもどうしようもなくメランコリックですけど、これは意識しているところなのでしょうか。
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| フラン: |
もちろん! 毎日意識しているよ。だって僕はとってもメランコリーな人間だから(笑)。今の世界情勢を見れば破滅に向かっているのがわかるし、そうなればどうしてもブルーな気持ちになってしまうけれど、朝目を覚まし、深呼吸をすると“ああ! 僕は今日もまだこうして生きている!”っていうことに感動するんだ。また息子を見ると“なんて可愛いんだろう”って喜びを感じる。妻を見ると“なんて賢くて、きれいなんだろう”って思う。そして鏡に映る自分の顔を見ると“なんてひどい顔だ! 目の下のクマがすごいことになっているぞ!”って、またびっくりするわけだけど(笑)、まあ、そういうわけで僕の書く曲は、その時々の僕を映す鏡、僕の気持ちの投影なんだ。落ち込むこともあるけれど、基本的に僕はポジティヴな人間なんだ。
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――そういえば、今回のアルバムには「アイズ・ワイド・オープン」と「マイ・アイズ」と、タイトルに“eye”が入る曲が2曲もありますが…。
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| フラン: |
ああ、本当はもう一曲あったんだよ。いや、もう二曲かな? アルバムには入れなかったけれど「Eye of a Needle」という曲と、もうひとつあったんだけど、タイトルをど忘れしちゃった。ホント、言われてみたらそうだよね! 気がつかなかったけど。実は、ちょっとした目の事故があってね、目が見えなくなって真っ暗やみで、自省だけを繰り返す生活を余儀無くされている時に作ったのが「アイズ・ワイド・オープン」、「セルフィッシュ・ジーン」、「ワン・ナイト」「バトルシップス」「ビッグ・チェアー」なんだ。でもあくまでも偶発的にそうなっただけ。僕には先を“見越す”力はないからね。
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――ついでにいうと、「アンダー・ムーンライト」や「ワン・ナイト」といった、夜を連想させる単語もタイトルに見られます。夜という概念でアルバムをまとめようして、意識的にそうされたのですか?
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| フラン: |
うん、それは意識的にしたことだね。このアルバムの曲には、なぜか日没から翌朝の日の出の間の出来事を扱ったものが多い。例えば「ニュー・アムステルダム」の中の「I watch the sun go down/Down down beneath the ground/And it's a new day, it's a new dawn/In New Amsterdam」から分かるように、この曲にも夜の暗闇が出て来る。また「3 タイムズ・アンド・ユー・ルーズ」の出だしは「I had a nightmare I lived in a little town」だし、「アイズ・ワイド・オープン」は「目を開けたまま、夢を見ているような状態」を描き出した曲だ。また「ワン・ナイト」は、「人生なんて、一晩で全く変わってしまうことだってある」ということを歌った歌だ。それに僕が曲を書くのは、日没から翌日の日の出の間だからね! だけど同時にこのアルバムでは、一日が終わり、新しい一日が始まるという生と死も重要なコンセプトの一つだ。実を言うと、僕の父が昨年他界してね。父とは疎遠だったけれど、それでも父の死に直面したことで、死について考えさせられた。それから4〜5ヵ月後に息子が生まれたことで、今度は生について考えた。このアルバムの制作中は、仮のタイトルとして『Arrivals and Departures』とか『Lost & Found』とか『You & Me』とかいろいろな呼び方をしていたけれど、結局最後は『THE BOY WITH NO NAME』に落ち着いた。一番クールなタイトルだというだけでなく、最もポジティヴな響きがあり、元気な息子にぴったりだったからね。ただ肉親の死に直面した時、大人の人間は、自分の人生と家族や仲間への責任に目覚めるんだ。僕の個人的な体験が色濃く出ているアルバムになったってことなんだよ。あくまでも最初からそれを意識して作ったわけではないけどね。
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| インタビュー・文/岡村詩野 |