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新作『クアリスティス』を引っ提げた、オウテカの約3年振りの来日公演。前回の来日公演でも照明は全て落とし、ほぼ視界ゼロの状態で音を流すというありそうで無いエクスペリメンタルな空間でのライヴ形態が話題となり、今回の恵比寿リキッドルームでの公演のチケットもソールド・アウト。今回もパフォーマンスを楽しむ要素の1つである“視覚”をあえて遮断し、ただ「音のみ」でどこまで聴き手に未知の刺激を与えてくれるのか。そんな期待を抱いたファンが開場前から入口付近に詰めかけ、静かな熱気に包まれていた。エントランスのガラス張りの扉の大部分に遮光のための黒紙が貼られていく光景を目に、その奥で繰り広げられるであろう“特別な夜”に胸を躍らせながら足を踏み入れた。 |

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メイン・フロアではまずロブ・ホールによるラップトップ・スタイルによるDJが始まっていた。序盤はエレクトロやアブストラクト・ヒップホップ、アンビエントなど様々なジャンルをミディアム・テンポを保ちつつ行き来する流れに、気持ち良く身体を揺らしていると、徐々に派手めな上モノが自然と混じってくると共に自然と気分が高揚してくるという、素晴らしい流れを展開。その職人的なプレイにはDJ界隈にもファンが多いというのも頷ける内容だった。 |



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一度ロブ・ホールによるDJが終わると、次は808Stateのメンバーでもあるグラハム・マッシーによるMassonix名義でのライヴが始まる。スクリーンに映し出される海洋生物や、奇妙なオブジェを頭にかぶった人物が機材を弄る、どこか懐古的でサイケデリックな映像と、独特な世界観を持った音楽が相まって面白いのだが、ここにさらに本人によるサックス、ギターの演奏を絡めるといった視覚的にも楽しめる変則的なスタイルのプレイに、会場は大きな盛り上がりと共に歓声に包まれた。その後再度ロブ・ホールが登場し、ここからは短時間ながらも最初からハードなテクノでガンガンに攻め立てるプレイを展開。フロアのテンションも一気にヒート・アップし、次のオウテカへ最高の形でバトンを渡した。 |
そして、熱気冷め遣らぬうちにフロアの照明が落とされた。元々照明は多い方ではなかったが、この時ばかりはフロア脇にある通路の照明も落とされ、隣の人の表情も分からないくらいの暗さが、フロア内を特異な雰囲気にしているのが分かる。ステージ上にある機材のうっすらとした明かりに浮き上がるように、オウテカの2人が登場するのを確認するとフロアは一際大きい歓声に包まれ、間もなくプレイが開始された。そこにあったのは、新作『クアリスティス』を始めとした、CDに収録されているようなアンビエント感漂う、落ち着いたインテリジェンス・ミュージックではなく、フロアを意識した激しいビートが刻まれたサウンド。恐らくオリジナル音源もどこかに散りばめてはあるのだろうが、原形を留めないほどに再構築された、オウテカの全く異なる側面が鳴り響く。一つ一つの研ぎ澄まされた音が、バラバラに鳴っているようでもあるが、リズムに乗るとそれが複合的に1つの波となって耳に入ってくる。
 前半こそ、怒涛に訪れる音の波に応えるべく、歓声を上げ、踊り狂うオーディエンスは多かったように見えるが、その波がさらに激しくなる中盤からは、だんだんとその足も止まり、ただ音の波に漂うがごとく立ち尽くしてゆらゆらと頭を揺らす人が増えていっていたように見えた。そのただ立ち尽くして音に聴き入ってしまうような感覚が訪れたのは自分も例外ではなかった。特に中盤から、暗闇をさらに堅固なものにするべく瞼を閉じて、ひたすら音と自分しかここに無いというような状態でしばらくいると、まるで脳が麻痺したような感覚に陥る。時々瞼を開いても、目の前に広がる人の頭の影がゆらゆらしている様や、その奥に見えるうっすらとしたステージの光が、まるでスクリーンに映し出された映像のごとく、ボーっと見えるような不思議な感覚。さらにその感覚を深化させるかのように鳴り続ける音に、自分の意思など介在せずただ音に意識を漂わせる時間が続く。ただ、はっきりと認識できたのは、その状態がまさに至福であったということ。クライマックスへ向け、さらに激しさを増したビートが鳴り止み、あっという間に感じられた1時間のライヴが終了。視覚という一つの感覚を有効的にシャット・アウトすることで、ここまで音の機能性が変化するものなのかと、これまで感じ得なかった感覚に興奮が冷め遣らぬ中、メイン・フロアを後にした。 |

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メイン・フロアがクローズとなった後は、ロフトでのマソニックスやロブ・ホールによるDJプレイが続き、オウテカの余韻に浸りながら踊る者や、先程のライヴについて興奮気味に語らう者(自分もその一人)など、それぞれが思い思いに楽しみながら“特別な夜”は明けていった。 |
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レポート・文 / 稲野辺 昌功 写真 / Teppei |

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