5枚目となるフルアルバム『For Beautiful Human Life』を引っ提げての全国ツアー「Kirinji
Tour 2003」のファイナルにして、彼らにとって初の武道館公演となったこの日のライヴ。会場は20代、30代の良質ポップス・ファンで満員御礼。もともとレコーディングこそが本領であると思っていたキリンジであったが、この日は違った。。ステージには、古代オリエント文明を思わせる巨大なモニュメントが2つどどんと配されており、天井には特大のミラーボールが吊るされていた。何やらテーマパークといった風情のセットにまずビックリ。このようなバブル期のエスニック料理屋の内装っぽい豪華絢爛な環境の中、いたってマイペースな彼らはいったいどんなステージングを観せてくれるのだろうか。まさかゲイリー・グリッターばりのギンギンなロック・ショウ?
なんてニヤついてたら、いつの間にか、気負いや気合などいっさい無縁な感じでステージ立っていた二人。“登場”という言葉がもっともふさわしくない“登場”の仕方であった。そしてすぐさま演奏はスタート。1曲目は、1stアルバム『ペーパードライバーズミュージック』収録の名曲「風を撃て」。編成は、堀込高樹&泰行ブラザーズ(ともにvo&g)/ペダルスティール/ギター/コーラス/鍵盤2人/ベース/ドラム/パーカッションという大所帯なもの。それぞれのパートが絶妙なタイム感で絡み合うさまは職人的ですらあった。2曲目は彼らの代表曲のひとつ「グッデイ・グッバイ」。初夏を思わせる爽快感が会場を覆う。その後は、キリンジ・クラシックスともいうべきチューンを挟みつつ『For Beautiful Human Life』のナンバーを中心にショウは進んでいく。同作にたち込めるAORチックな音世界が忠実に再現され、先述のゴージャスなセット、派手目なライティングがもたらす効果と相まって、会場は“アーリー80’s”な雰囲気に。エッチで軽薄な気分をデオドラントで包み込んだような……あの感じ、だ。オーディエンスはしばし間、幸福な現実逃避を大いに楽しんだ模様。